獅子と狛犬の関係性について

獅子と狛犬は似ている?

神社仏閣でよく見かける狛犬。石像として有名です。2体で一対となっているのが一般的です。「狛犬は獅子と似ているけどどこが違うのか」よく聞かれます。

そもそも論:日本発祥の狛犬と大陸由来の獅子は別物

中国にも朝鮮(韓国・北朝鮮)にも「狛犬」は存在しません。霊獣としての「獅子」がルーツです。

獅子(ライオン)が実在する動物だということは皆様ご承知のことと思います。その力強さや存在感から、歴史上の王様や権力者が好んだと言われています。生息数も限られた希少動物でもあったため、インドやペルシア(現:イラン)方面ではライオンが「権力や富の象徴」としてみなされました。

仏教の伝播に伴い、実在のライオンは架空の「獅子」となり、神を守る「霊獣」となりアジア大陸を中心に各地に広がっていきました。

それがなぜか、日本に入ってくる過程で「狛犬」に変わっていきます。その点については確証が持てる証言はありません。憶測や推論、希望的観測に基づいた説が一般的です。

狛犬の由来

中国由来説、朝鮮由来説があります。獅子舞自体、中国や韓国、朝鮮にルーツがあります。どこを経て日本に伝わったかによって解釈が違っています。

狛犬中国由来説

狛犬の元となっている獅子の石像は中国には至る所にあります。玉を口に入れていたり、足元に転がしていたりします。随から唐の時代(6〜10世紀ごろ)、日本との行き来が盛んだった頃に獅子の像も持ち込まれました。

いつしか日本では「獅子・狛犬」という架空の生き物(霊獣)のペアとして扱われるようになり神社などに奉納されています。それらを総称して「狛犬」と呼ばれるようになっています。

狛犬朝鮮由来説

狛=こま。高麗。朝鮮に由来する名前です。狛犬は朝鮮(高麗)からの渡来人が持ち込んだという説があります。朝鮮半島でも対の獅子が見られます。あくまでも「獅子」=ライオンです。神の使いとして、また霊獣として存在する獅子にあやかって奉納されます。

朝鮮に由来する地名は日本に多く存在します。そのような地域に祀られた獅子の像は朝鮮からの渡来人やそのゆかりの人が持ち込んだり作らせたりしたため、朝鮮由来だと認識されているようです。

なぜ獅子が犬になったのか

諸説あるようですが正確なところはわかりません。
・伝承者が「獅子」を知らず「犬」と思い込んでいた説
・伝承者が獅子のつもりで石像を作ったものの、丸みを帯びたデザインが犬に見えた説
・伝承者が獅子の石像を正確に作る力量がなかった説
などがあります。

※伝承者:
・中国・朝鮮などから渡ってきた渡来人説
・渡来人に教えを請いた日本人説
とあり、さらにややこしくなります。

総じて言えること:相当アバウトです

文献としてはっきり残っていることもなく、言い伝えレベルで伝わっている話です。伝える人、聞いた人、それぞれの解釈によって変わったり地域(の都合)によって変わったりします。「これが正解」と断じることはなかなか難しいですが、諸説あることをご理解いただければ幸いです。

この獅子像は中国南部、広州市で見かけました。

昨年ベトナムに行った時にも同じような顔の獅子を見ました。ベトナムの石材工場でも作っているということでした。

結局はいろいろなルーツが入り組んでいるに過ぎません。「ある視点」からの伝聞や史実がそれぞれの「真実」として伝わっているのが現実です。個人的には「どれも正解」でいいのではないかと思うのが率直なところです。

Posted by densya